お知らせ お知らせ

2021.01.27

ブログ

コロナ新戦略〜「みんなで毎日自宅検査」で第4波を封じ込める

コロナ第3波による感染拡大が続いている。緊急事態宣言の再発令によって少し鈍化の傾向も出てきているが、ここで気を緩めてはならない。政府のこれまでのコロナ対策の問題は、感染者が減った段階で、再拡大への備えをしないまま、経済活動の再開へ一気に舵を切ったことで、感染の再拡大を招いたことだ。昨年の夏や秋の段階で、特措法を改正せずに国会を閉じたり、医療提供体制や検査体制を拡充しないまま第3波を迎えることになったことは、「政治の不作為」と批判されても仕方がない。

 

そのような無為無策を二度と繰り返さないために、これからの新しいコロナ対策として「第4波封じ込め戦略」を提案したい。そして、そのカギとなるのが、PCR検査より安く、早く結果の出る抗原検査による頻回自宅検査だ。

■第4波封じ込め戦略とは

この「第4波封じ込め戦略」は3つの段階からなる。

 

1.感染拡大局面:感染者を減らすための強めの規制

2.制圧後:検査・追跡・隔離の拡充による再拡大防止と緩やかな規制

3.再拡大防止後:ワクチン接種による集団免疫獲得

 

Viola Priesemann et al. “Calling for Pan-European commitment for rapid and sustained reduction in SARS-CoV-2 infections” PABST, December 21, 2020 / Image: Work by Ewa Szczurek

 

まず、第1段階の感染が拡大している局面では、感染者を短期間で減らすため、人と人との接触を減らす強めの規制を講じなければならない。その意味で、感染拡大防止の実効性を高めるための特措法改正、特に「万全の補償」と「罰則」をセットで導入することを急ぐべきだ。特に、補償のための財政支援をケチってはならない。

また、喫緊の課題である病床確保には、コロナ患者を受け入れる医療機関への財政支援、特に、実費だけでなく減収補填、赤字補填にも使える支援金が必要だ。あわせて、病院の機能に応じた役割分担と連携に関する国や知事の総合調整機能の強化も急務だ。

 

そして「第4波封じ込め戦略」において最も重要なのが、波を制圧した後の第2段階だ。ここで強めの規制から緩やかな規制に移行すると同時に、「検査・追跡・隔離(保護)」を徹底的にやって、感染者数を低く抑え続けることがポイントだ。

■流れを変える抗原検査

ここで重要になるのが、PCR検査より安く、早く結果の出る「抗原検査」を、望む国民が手軽に何回でも受けられる体制の実現だ。抗原検査キット(定性抗原検査)は妊娠検査薬のような形状で、ろ紙にだ液(の希釈液)を垂らして15分程度で陽性ラインが表示され、目視で結果がわかる。医療機関や検査機関に送る必要もない。アメリカでは1ドル(約100円)以下のキットも開発されている。

PCR検査より精度は落ちるが、15分程度で迅速に結果が出るし、日本でも100円程度の安いキットが普及すれば、自宅で誰でも気軽に検査を受けることも可能だ。例えば、毎朝、出勤前や登校前に、熱を測ると同時に検査して陰性であれば、仕事や学校などの経済・社会活動も回せる。これが「みんなで毎日自宅検査」だ。

では、なぜ抗原検査なのか?精度が低いのに大丈夫なのか?

 

コロラド大学とハーバード大学のチームは、検査精度、検査頻度、結果が分かるまでの時間のどれが感染拡大抑制に重要かを分析した。その結果、頻度と早さが、感染者の効果的なスクリーニング(ふるい分け)につながる一方で、精度の高さは限定的な効果にとどまるとの結果をまとめている。

Daniel B. Larremore et al. “Test sensitivity is secondary to frequency and turnaround time for COVID-19 screening” (Science Advances  01 Jan 2021:Vol. 7, no. 1, eabd5393)

 

この論文によると、頻度と早さによる実効再生産数(すでに感染が広がっている状況において、1人の感染者が次に平均で何人にうつすかを示す指標)の減少率は88%なのに対し、精度に優れた検査での減少率は58%。PCR検査で検出できるが、抗原検査では検出できない期間(下図の薄い青)のほとんどは感染力が低下した段階であり、この段階の感染者を検知し隔離することで、逆に医療崩壊を加速させる可能性も出てくる。さらに、無症状感染者が感染を広げる新型コロナウイルスの特徴を考えると、結果が出るのに時間のかかるPCR検査の特性は、感染拡大防止の観点からはむしろ弱点となる。

つまり、抗原検査は精度の観点から言えばPCR検査に劣るものの、人にうつす感染力のある期間の検知能力は十分あるのだ。そして、抗原検査はPCR検査に比べて安く、早く結果が出るという特徴があるため、毎日でも自宅でセルフ検査を行うことが可能であり、この頻度と早さによって精度の問題はカバーできるというわけだ。ただ、感染のピーク時に急に検査を拡充すれば、短期的に陽性者が増え、病床逼迫に拍車をかける可能性もあるので、タイミングや実施する地域や業種については、限定的に開始するのが現実的だろう。

 

そして、感染再拡大を抑え込んだ第3段階には、いかに早期に、国民全体のワクチン接種による集団免疫につなげていけるかだ。ただ、現時点において、医療従事者や高齢者ではない一般の国民がいつワクチンを接種できるのか、いつまでに国民の何割の接種を目指すのか、ワクチン担当である河野大臣も明言を避けている。当然ながら集団免疫獲得の時期が遅れれば遅れるほど、第4波のリスクは高まる。官民挙げて総力を結集し、デジタル化をフル活用しながら早期のワクチン接種を実現しなくてはならない。

■症状が出てから検査では遅い

新型コロナは発症2日前の感染力がピーク、つまり無症状のときにウイルスをまき散らしてしまうという特徴があるとされる。感染力が高い無症状感染者を早く見つけ出し、人に移さないように隔離することが、感染拡大の「芽」を早めに摘むことにつながる。症状が出てから検査することにこだわっていたら、第4波を回避できない。加えて、検査を受けたくても受けられない「検査の目詰まり」を解消するゲームチャンジャーにもなり得る。だからこそ、抗原検査を国民が手軽に何回でも利用できるようにする政策が重要だ。ポイントは価格だ。

 

実は、政府は第2次・第3次補正予算で500億円以上の予算をつけて抗原検査キットを購入している。これを感染拡大防止のための検査に位置づけ、もっと予算をつけて国民に無料または安価で提供してはどうか。ニーズが出て来れば、国の支援に頼らなくても次第に市場原理で値段も下がっていくだろう。菅政権は、携帯電話の料金を下げるのもいいが、今は、検査の値段を下げることにもっと一生懸命になるべきだ。

 

ちなみに、米国バイデン政権も新たなコロナ対策として、自宅検査(home-tests)やインスタント検査(instant-tests)といった次世代検査(next-generation testing)へ投資し、検査能力を大幅に増強するとしている。

■国が検査キットの無料配布を

そこで手始めに、今後行われるワクチン接種の会場などで、抗原検査キットを無料で配布することを提案したい。検査結果は保健所などの負担にならないようQRコードなどを使って手軽に入力してもらい、感染状況を全国規模かつリアルタイムで把握するようにしてはどうか。1月26日の衆議院予算委員会で菅総理に提案したところ、一つのアイデアとして受け止めたいとの返答だったが、ぜひ実施に移してもらいたい。

 

よく「これからも感染拡大の波がくることを前提にしなくてはならない」とか、感染が拡大したらその都度強い規制で叩く「ハンマー&ダンス」戦略が必要という議論があるが、これ以上ハンマーを振り下ろす事態になれば、日本経済も国民生活も破壊されてしまう。第4波が起きれば、オリンピックの開催などとても無理だ。これからは、第4波を発生させないとの強い意志を持った戦略が必要だ。

 

検査拡充については根強い批判や反論もある。もちろん、マスクや手洗い、三密回避などの感染症対策も引き続き重要だ。しかし、これまでのやり方が功を奏していない以上、新たな戦略が必要だ。第3波を抑え込んだ上で、無症状感染者を速やかに検知・隔離する体制を拡充し感染者数を低く保ち続ける。そして、ワクチン接種による集団免疫獲得につなげていく、この「第4波封じ込め戦略」を新・コロナ戦略として提案したい。

 

その鍵が、抗原検査を用いた「みんなで毎日自宅検査」の実現だ。

 

さらに精緻な戦略にしていきたいので、ぜひ皆さんからのご意見をやアドバイスをお願いしたい。